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ご挨拶

一般財団法人藤田尚徳会創立者藤田トクは、歯科医として昭和10年東京を振り出しに診療活動を開始し、帰省後三沢・三本木(現十和田市)・六戸と診療所を開設し、地域のための診療に献身的に打ち込んでまいりました。またその東奔西走の日々の間にも、多分野にわたってボランテア活動をしてまいりました。今日のようにボランテアという言葉も聞かれない時代でしたが、本人は自分が必要とされていると思うと「もう片足が出ているのよ」と笑って話しておりました。第二次大戦前、勉学のために三本木から上京し、一人分の生活費で姉とともに、ふたりでの非常につつましい学生生活を送っていたようですが、その当時出会った東京・関口カトリック教会のスイス人司祭で、明るく広い心を持った行動の人・フロジャック神父様や、さまざまな国籍の心豊かな知人・友人に恵まれた日々の中で、ごく自然に自分に与えられた使命(ミッション)の樹も育まれていったようです。

現在の、「医学の道」を志す高校生を対象とした藤田尚徳会の前身は、「学業、スポーツ、芸術などの各分野に秀でている高校在校生」を対象としておりましたが、その頃から「私のしていることは福祉活動ではありません」と話しており、「夢と強い意欲を持ち、将来地域の力となりうる資質と可能性を持った若い人たちの人材育成」のために、少しでもお役に立ちたいと願っておりました。この精神は「医学の道」を志す高校生を対象とする現在でも変わらずに、私たち藤田尚徳会のスタッフ全員の願いとして受け継がれております。

将来どのような時代や環境にあっても、この奨学生の方々の存在が医師としてのよいネットワークを築き、多くの病める人たちのいのちを助け・力となりますように、私たちはまざなしを向け続け、応援していきたいと思っております。

この厳しい北の大地にあって、ささやかな存在ではありますが、一般財団藤田尚徳会奨学金の活動にご理解を戴きたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
                         前理事長 戸村 春樹

創立者 藤田トクの歩み

大正4年
青森県三本木町(現十和田市)に川村重蔵、イチの次女として生まれる。実母イチは26歳で早世、ギリシャ正教の信者であった母方の祖父佐々木竹三の、深い信仰心と誠実な生き方に大きな影響を受けて育つ。

昭和6年
三本木実科高等女学校(現青森県立三本木高等学校)を卒業し上京。

昭和6年
日本女子歯科医学専門学校入学。
在学中に東京大司教区副司教・カトリック関口教会司祭フロジャック神父(※)の指導を受け、洗礼を授かる(洗礼名マリア・テレジア)。この豊かなカトリック的環境の中で、多くの知己を得て交流。以降の医療奉仕活動の精神的基盤となる。

昭和10年
日本女子歯科医学専門学校卒業(歯科医学士取得)
東京銀座、新宿伊勢丹などで歯科医として勤務。

昭和13年
三本木町に帰郷、川村歯科診療所を開業する。以降、地域の歯科医療のために献身的に仕事に邁進。
昭和23年婚姻により、以降藤田姓となる。

昭和35年
東京女子医科大学にて博士号取得。
歯科医療のほか、人材育成のために教育・文化活動も積極的に支援。

昭和56年
紺綬褒章受賞。他にも平成8年勲五等瑞宝章、平成9年十和田市褒章授章、平成16年ソロプチミスト日本財団社会ボランテア賞など受賞多数。

平成6年
次代を担う若い世代育成支援のために、育英事業「藤田尚徳会奨学金」(高校生対象 ~平成16年)設立。

平成20年
医学生を対象とする育英事業「藤田尚徳会奨学金」開始。



※注 パリ外国宣教会司祭(1886~1959)1909年来日。底辺に生きる病んだ人・貧しい人・苦しむ人の救済のために、愛と奉仕の献身的な全生涯を捧げ、日本の土となる。